« 実業団女子&学生女子ハーフ | トップページ | 笑顔で悠々と »

2013年3月24日 (日)

TWO LAP RUNNERS

晴れ。日曜日。練習も休み。というか1時間ほど散歩。

2laprun

著者:川島誠
発行:マガジンハウス(1992年)

陸上の本というとシューズの表紙が多いかな。文庫版はトラックの絵になっている。

宣伝文句は

なぜ八〇〇メートルを始めたのかって訊かれたなら、雨上がりの日の芝生の匂いのせいだ、って答えるぜ。思い込んだら一直線、がむしゃらに突進する中沢と、何事も緻密に計算して理性的な行動をする広瀬。まったく対照的なふたりのTWO LAP RUNNERSが走って、競い合って、そして恋をする―。青空とトラック、汗と風、セックスと恋、すべての要素がひとつにまじりあった、型破りにエネルギッシュなノンストップ青春小説。

野生の中沢vs知性の広瀬。この二人が交互に一人称で語る陸上小説。著者も高校時代に800mの選手。

一人称の俺が中沢でぼくは広瀬。

作品中で気に入った箇所を列挙してみた。

なぜ800mを始めたのかって、雨あがりの日の芝生の匂いのせい

陸上競技場は、そんなにも特別なところだ

最初にその底に降りたときには、脚が震えたぜ。うん、ビビッたな、正直言って

こんなひろい、はれがましいところにいるのは初めてだって気がしたね。空が違ってみえるんだ

ウオーミング・アップで芝生の上にころがる。二度と起き上がりたくないと思った

気がついた、もうバック・ストレートになってた。俺、ここの景色を一番覚えてる。たぶん、一生忘れないね。まっすぐ、コースがあるの。それで、その先のスタンドは芝生になってて、で、また、その上にまっ青な空が、ぽかっと見える

バックの直線駆け抜けて、コーナの入口でひとり抜いた。大回りになって損だなって思ったけど、それどころじゃない。

みんな、止まってるんだないかって気がしたぜ。俺は走ってるのにさ。もちろん、俺だって苦しくなってた。でも、ぜんぜんスピードが違ってて、ほとんど外側走って直線だった

コースはひとりひとり分かれてなくてオープンだから、駆け引きがある。勝とうと思ったら、かなりの速さで走りながら緩急をつけなきゃならない

短距離っていうのは、才能なのだ。もちろん努力しなきゃだめで、努力すれば速くなるんだけど、絶対的なところで、生まれもっての才能なんだって気がする

100や200の調子で走れる限界は、300mぐらにある

からだがほどけてしまうようで、アゴがあがって、スライドだけがのびてバタバタ

ひとより速く走れることに何の意味があるかって考えると、意味はないんだ。でも、そんなことをいいだしたら、すべてのことが無意味だ。

ばくは、ぼくのからだが好きなのだ。800メートルを走っているときのぼくのからだが。それが、どんなふうに動いて、どんなふうに感じて、どんなふうに苦しんでいるかが

800mっていう種目は、結局、「抑制」なんだって思う。自分のからだ中の筋肉に気をつかって、コントロールして抑える。どれだけうまく抑えて、無駄なエネルギーを使わなかったが、最後の勝負にひびいてくる

コーナにさしかかったところで、二番になっていた。・・・ そのまま抑えてついていった。そして最後の直線に出るところで、一気に第二コースにふくらんで、並んだ。
そこでもう、勝ったってわかった。
ぼくは100メートル・ランナーだったのだ。スプリントで負けるはずがない。ていねいに、ていねいに、ラスト・スパートをかけた。予定通り

800mは、結局は、最大酸素負債量の勝負なのだと思う。
酸素負債量というのは、酸素を取り入れないで、からだとしては借金しながら、どのくらい運動が出来るかという能力。酸素摂取量というのは、決まった時間。1分ならその1分間に肺から酸素を取り入れる能力のこと

800mでは、スタートしてから200mで、最大酸素負債量の70%に達して、そのあとの600mで残り30%がだんだんと増えていく。だから、200mから先は酸素摂取能力が重要になる、というのが運動理論

限界に近い酸素負債、つまり、もう借金で酸素がほしくてたまらない状態でハイスピードを維持しながら、酸素をこんどは思いっきり取り入れていかなければならない、だから。800m走者は、つらい

酸素を吸収する能力も当然いるだろうけど、走っている間、それはそう意識してることではない。感じるのは、筋肉のなかに老廃物がたまって、悲鳴をあげているのを、おさえて、がまんして走り続けてる、そんなイメージ

本当に速く走れるようになりたかったら、無駄に疲れる練習なんてしたらいけない

量よりは質の問題で、適度な刺激を与え、そのあとは、むしろ回復させるのに時間をかけるべき。だらだら練習してるから、スプリントがなくなっちゃうんだ

やっぱり先頭にたたなきゃ。ひとの背中見ながら走るのっていやでしょ

たいがいは追い風と向い風の両方がある。その両方の風向きに合わせた走り方、高度な技術が要求される

ぼくは、走るときは、走ることだけに集中したい。他のことは何も考えたくない。

陸上はなんといっても、自分のからだとの対話なのだ。最終的には、結局のところは、レースの相手なんて関係ない。

自分のからだを調整して、100パーセントの力を試合で出せるようにする。そのための準備なんだ。

レースのある日は最高。陸上競技場にいられる。お祭りだよね。

ひとより速く走ることが快感だからだ。

スパイクが全天候のラバーのトラックをとらえ、突き刺し、後ろへと蹴り、ぼくのからだを前に運ぶ。これは、おそらく、陸上競技をやったことのないひとにはわからない感覚だ

ハードルって、ちゃんと見たことある?
位置付いて、用意、っで、バンでしょ。そうすると、八人の女の子がバッと一列でとびだしてきて、最初は同じような、でも、ちょっと微妙にズレたタイミングで、ひとつめのハードルを越える。
それで、タッタッタ、バシ、タッタッタ、バシって感じでハードルを越えて、どこかで何台か倒れる音がガシャッていって、気がつくとグングン伊田だけ前に出て来るの。
すごい迫力

アウトコースで大切なのは、後ろから来るだろう他の選手たちを気にしないことだ。自分の走りのイメージ、大きな走り方をするように心がけてコーナリングをする

第2コーナを脱けるとオープンコースになる。少しずつ斜めにインにはいってゆく。ここでペースを乱さないようにして良い位置を確保しなければならない。

バックの直線で、急に向い風が強まる。ぼくは、前の選手について、体を小さくし、強く腕を振る。あとは少し抑えたままでいくのだ。

「あんなさ、最初からトップに立って、一周目のラップも取って、抜かれるまで一番でいく気なの?」
「何も、頭使ってないんだ」
「気持ちいいレースだね。将来、有望だよ」

上体を前に向けて保ったまま、左右の足が一直線上に着地するように腰の回転を使って走る練習をする。ストライドをかせぐためには、脚を前に振り出して着地するときに、ウエストの回転を利用して、振り出す側の腰を前方に突き出すようにすればいい

ぼくのからだは機械だ。
それは、外からの刺激に自動的に反応するだけだ。ピストルの音を感知し、瞬時に筋肉を収縮させ、スタートをきる。風、気温、ペース配分、他のランナーの実力と現在の全体の位置取り、自分の筋肉に状態、すべて計算し、からだの動きを制御する

もし神がいるのだとしたら、ぼくの神は陸上競技場に宿っているのだろうと思う

高いレベルで800をやるには、持久力なんかに頼っていられないからだ。勝負はたいてい最後の直線で決まるのだから、爆発的な瞬発力、スプリントがいる

とにかく、まず、第2コーナの終わりの合流点でトップに立つことだ。
俺の場合、他のやつの走りなんて、どうでもいい。しょうもないかけひきなんてしない。最初にトップになって、そのまま一位でゴールを駆け抜ける

ピストル。
ぼくは、なめらかに走り出す。ストライドをおおきくするように心がける。力まないことが大切だ。

広瀬がものすごく積極的。どうせ、また、チンタラチンタラ走ってて、最後に追いかけてくるんだろうと思ってた。そしてら、最初から俺の前に出てくる。こいつがこんな走り方すんの、初めて見た。
嬉しくって、ゾクゾクしてくるね。
やっぱ、レースはこうでなくっちゃ

直線の向こうに、でっかい青空が見える。俺が初めて800メートルを走った日と同じだ。まっすぐ、まっすぐ走る。そのまま空に飛んでって、吸い込まれそうだぜ

そしたら、広瀬が少しだけ、アウトへふくらんできた。俺に抜かせないために、なりふりかまわず走路妨害めいたことまでしようっていうの。
いいねえ。
君に欠けてたのは、そういうファイトなのよ。
レースはケンカだ

そのとき、ぼくは、ぼくのからだに力の生まれてくるのを感じた。ぼくのからだが走りたがっているのを感じた

あのバック・ストレートの終わり、第3コーナにかけてのトラックの外の芝生で、俺たち、横になってた夜があったよな。伊田と、俺と、広瀬とで。
あれは、いい夜だったよな、絶対。これから、どんなことがあったって、それだけは、変わんないよな。

気持ちいいぜ。やっぱ、走るっていうのは、一番前を走ることだ。

ぼくは、フォームを整え、ラストスパートにはいる。
アゴをひき、腕を強く小さめに振る。しかもリラックスをめざす。

もうすぐ、あと数秒で800メートルは終わる。そう、ぼくは、負けるかもしれない。でも、ぼくは、一生800メートルを走り続けるだろうと思う。これから、死ぬまで。

陸上経験者にはバシバシと心に響く。

ちょっと引っ掛かるのは、

長距離選手のことをコケしている箇所が目につくんですね。

それに高校生の恋愛って、こんなに進んでるの

|

« 実業団女子&学生女子ハーフ | トップページ | 笑顔で悠々と »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 実業団女子&学生女子ハーフ | トップページ | 笑顔で悠々と »